指名手配ヴァイオリン奏者 H to N
HAHN, Hilary / ヒラリー・ハーン

クールで理知的。というレコード会社のイメージ戦略に乗ってなのか、演奏自体も熱くなるあまり周りが見えなくなるような、そういった熱演とは正反対の、一歩離れたところに視点を置いた演奏、というふうに感じる。ま、俺の場合可愛いから許すんだけどね(何をだ?)。
まあよくも此処まで完璧に仕上げるものだと感心してしまうくらい、全てがコントロールされている演奏。美少女サイボーグに萌えるオタク狙いか?
冗談はさておき、エルガーのコンチェルト。これからもっと聴き込んで行かねばならない部分多々あれど、この集中力たるや凄まじいものがある。音色は硬めだが、耳障りではない。一聴の価値はある。


HEIFETZ, Jascha / ヤッシャ・ハイフェッツ

20世紀最高のヴァイオリニストと称され、数々の名演・名録音を残してきた稀代の大ヴァイオリニスト。テクニックは完璧とされ、ハイフェッツのテクニックに惚れ込んでいくつもの曲が献呈されるなど時代を代表する奏者といっていい。
ヴァイオリンからこんな音がするんだ、などと今更に思ってしまうほどに全く次元の違う演奏を繰り広げる。当然ながら解釈、という面においては人それぞれの好みがあり彼の解釈とて万人に受けるものではない。しかしながら解釈は違えど達する目標は同じはずで、それを目指して一心不乱に弾きまくるハイフェッツの神がかり的な演奏に感動するしか、他無いのである。
個人的には、小品を奏でるハイフェッツが一番好きである。
曲と対峙する、というよりは同じ歩調で一緒に歩く、というイメージで。


KASHIMOTO, Daishin / 樫本大進

日本人ヴァイオリニストの中でも抜群の安定感を誇るといってもいいだろう。
音色的にはアンネ=ゾフィー・ムターによく似た、目の詰まった、丸いトーンのように俺は思う(サントリーホールの舞台裏で弾いている音からの判断だけど)。
最近の彼の演奏を聴いていないので今を論じることは出来ないが、ザハール・ブロンについている時の音楽は、きわめてオーソドックスな演奏だったように思う。
よってバイトとしてサントリーホールの裏方から聴いていたブラームスのコンチェルトなどは、テクニックをひけらかすことなく、素直で忠実な演奏だった。
彼の音楽は、まさにこれから、なのかもしれない。


KENNEDY, Nigel / ナイジェル・ケネディ

ヴィヴァルディの「四季」セールスがクラッシック世界最高ということでギネスに乗っているヴァイオリニスト。メニューインの弟子でありながらジャズヴァイオリニストのステファン・グラッペリに傾倒しジャズとクラシックの両刀遣いとなる。
彼のジャズアルバムはまだ聴いたことがないけれども、ベルリンフィルでブラームスのコンチェルトをノリントン指揮(古楽指揮者だぜ!?)で演奏したとき、衛星放送か何かで見ていたのだが、第1楽章で演奏している彼の姿、音楽に何故かぐっと来て、第2楽章では涙が出そうになった覚えがある。歓喜の第3楽章ではフィナーレとともに素直にテレビに向かって拍手をしてしまったことを覚えている。
たとえジャズにも傾倒していたからって、だからって音楽が純粋でないとか、中途半端とかそういう考え方するのは誤りだと思う。このコンチェルトを数々のヴァイオリニストが奏でてきて、果たしていったい誰が涙が出そうになるほど感動させてくれるのか。
ルックスが、スタイルが、演奏方法が、なんて全く関係ない。夫々の道を究めた彼がひたすら楽しそうに、祈るように、または極度の緊張感を持って演奏する。その音楽を純粋に楽しめばいいのである。
様式に囚われ過ぎるのは愚の骨頂であると思う。

KOGAN, Leonid / レオニード・コーガン

指名手配中


KREISLER, Fritz / フリッツ・クライスラー

指名手配中


KREMER, Gidon / ギドン・クレーメル

オイストラフに師事。
集中力、緊張感、鋭敏、異常、刺激的、ストイック、狂気、耽美、孤独といったコトバによってイメージされる音楽に最も近い男といえる。口を半開きにしてヨダレを垂らしながら作品に没頭する姿は良く言えば鬼才あるいは奇才、悪く言えば変態である。
そういったステージ上でのアクション(?)だけに留まらず、録音においても奇才っぷりを発揮、カデンツァは一般的なものは使わず、取り上げる作曲家もメジャーどころというよりは奇抜どころ、かな。クレーメルにメンコンは絶対合わない気がするしね。
録音では線が細いけれど、とてつもなく大きな音量で、修行僧のようにストイックで、とそんな感じであります。彼のバッハの無伴奏などは異端であるといわれるが、もはや異端を通り越して美しくさえある出来であると思う。


KUCHL, Rainer / ライナー・キュッヒル

現ウィーン・フィル第1コンサートマスター。
数々の節目の演奏では必ずといっていいほど彼がコンマスとしてイニシアティヴを取る場面をTVなどでよく見るたび、桶をガンガン引っ張っていく姿に「コンマスあるべき姿像」を、そしてヴァイオリンの演奏スタイルで、ボーイングも美しくメリハリのある演奏に「オケ弾きはこうあるべき姿像」を見て、ぜひこれはエッセンスを少しでも自分のものにしなければと思い、彼が主催するムジークフェライン弦楽四重奏団行って見た。左手の柔らかな動き、曲線的なフレージングとは対照的に、弓元でガリガリと硬い音で弾きまくる姿にとてつもないショックを受けたのを覚えている。
結局今思うのは、彼らの発想は彼らのホームグラウンドであるムジークフェラインでお客さんの耳元へ届く音がどうあるべきか、という教育なり伝統を体得しており、その弾き方で紀尾井ホールで弾いたらエライ硬い音でゴリゴリ来た、ということなのだろう。つまりは「ホールも楽器」なのである。


MENUHIN, Yehudi / ユーディ・メニューイン



MILSTEIN, Nathan / ナタン・ミルシテイン



MULLOVA, Viktoria / ヴィクトリア・ムローヴァ



MUTTER, Anne-Sophie / アンネ=ゾフィー・ムター

現代の女流ヴァイオリニストの中ではピカイチの存在。
速く細かい振幅のヴィブラートが情熱的な旋律を湧き立たせ、女性的な絹のような滑らかな音色で優しく歌い上げる。ハイライトはカラヤンと共演したヴァイオリン協奏曲で、その中でもブラームス、ブルッフ、メンデルスゾーンの出来は完璧といっても過言ではない。
眉間にしわを寄せて苦しそうに弾く姿はキライだが、すぐに聴いてムターと判る独特の音色は何にも増して強力な武器となる。